なぜ塩分を取ると高血圧になるのか?実は血圧が上がる理由は他にもある
塩分を取りすぎると高血圧になる、と言われていますが本当でしょうか?
厚労省でも1日の塩分摂取基準は1日7g以下とするよう指導されています。
ですが、一部で塩分の取り過ぎは必ずしも高血圧にならない、とも言われています。
どちらが本当なのでしょうか?
実は、血圧が上がるタイプには2種類あり、塩分が関係するものと関係ないものがあります。
そこで、なぜ塩分を取りすぎると高血圧になるのか、塩分が関係する・関係しない高血圧についてご紹介します。
目次
なぜ塩分を取ると高血圧になるのか?
塩分を取ると高血圧になる理由は、人間は体内の塩分を一定量に保つ仕組みがあるからです。
まず簡単に言いますと・・・
→血液中に塩分が入ってくる
→血液の塩分濃度が高くなる
→血液中の水分を増やして塩分濃度を下げる(体内の塩分濃度を保つため)
→血液量が増える
→血管にかかる圧力が高くなる
→血圧が上がる
塩分は水分を吸収する働きがあるので、体内の水分が血液に溶け込むんですね。
そうすると、血液量が水分で増えると、血管がパンパンに膨らむのです。
血管がパンパンになる、ということは、血管に圧力がかかっている=血圧が上がる、ということなんです。
塩っけのある食べ物を取ると、のどが渇いて、水を飲みたくなりますよね。
塩分は体内に水分を取り込め!というサインになり、体が水を欲するのです。
塩分を取ると血圧が上がる仕組み(詳細)
もう少し詳しく言いますと・・
人間の体内は、約60%の水分を含んでいます。
水分は、体内の細胞が生きていくのに必要不可欠なもので、水分が多すぎても少なすぎてもいけないです。
そのため、体内には、水分の調整役としてナトリウム・カリウムが使われています。
ナトリウムは水分を吸収する働きがあり、カリウムは水分を排出する働きがあります。
塩=塩化ナトリウム(NaCl)で、塩を水に入れると、塩素(Cl-)とナトリウム(Na+)に分かれるのです。
塩分を含む食べ物を食べると、胃で消化され、小腸で塩分が血液に溶け込んで移動します。
血液に塩分が入ると、塩分は水分を吸収する性質があるため、より多くの水分が血液に溶け込んできます。
血管は水分が行き来できるようになっており、血液中の水分量の調整が可能です。
そこで、血液中に塩分が多いと、血管に水分が入ってきて、血液中の塩分濃度を保とうとするのです。
そうすると、血液に水分が加わるため、血流量が増えます。それで、血管を通る血液が血管に圧力がかかるため、血圧が高くなるのです。
これは一時的な血圧上昇の仕組みですが、日常的に塩分が多めの食事をしていると、徐々に血液中の塩分濃度が高まってきます。
水分を取ると体内の塩分濃度は下がりますが、尿で水分を失うと、体内の塩分濃度が上がるんです。
水分は尿以外に汗、便などで排出されますが、水分を取らない限り、どんどん体内の水分は減っていきます。
ですので、塩分濃度は高くなりやすく、結果的に血圧が上がっていきます。
逆にカリウムを含む食べ物を取ると、塩分濃度が下がり、血圧も下がりやすくなります。
カリウムを多く含む食べ物は、キュウリ・ナスなどの夏野菜など。体を冷やす効果もあります。
ですので、高血圧が気になる方は、塩分を含む食べ物よりも、カリウムを多く含む食べ物を食べたほうがいいですね。
高血圧になる大きな原因になっているのが、毎日の食事での塩分なのです。
なめくじが塩で縮むのも同じ仕組み
なめくじに塩をかけると、縮んでいくのを見たことあるでしょうか?
塩には、水分を吸収する働きがあります。
そのため、なめくじに塩をかけると、塩がなめくじの体内に入っていき、塩分濃度が高くなります。
すると、体内の塩分濃度を保持しようとして、水分を吸収しようとします。
ですが、なめくじの体内には、塩分濃度を保持するための水分が足りません。
そこで体全体の水分を吸収しようとして縮んでいきます。
なんだか、かわいそうですが、塩分の大事さを教えてくれる実験です^^
塩分以外で高血圧になる仕組みとは?
高血圧になる仕組みは、塩分以外には次のものがあります。
レニン・アンジオテンシン系による血管収縮
慢性的な高血圧になる原因は「レニン・アンジオテンシン系」があります。
日本人の多くは、塩分が原因の高血圧とされますが、約3割程度はレニン・アンジオテンシン系による高血圧と言われています。
55歳以下で高血圧の方は、レニン・アンジオテンシン系で高血圧になっている可能性があります。
65歳以上の高血圧の方は、レニン・アンジオテンシン系よりも塩分の影響が高いとされます。
約55歳~65歳の高血圧の方は、レニン・アンジオテンシン→塩分の影響が高くなっていくとされています。
レニン・アンジオテンシン系とは、腎臓で作られる「レニン」と言う物質が「アンジオテンシンⅠ」を作り、さらに「アンジオテンシンⅡ」と言う物質を作ります。
アンジオテンシンⅡは、血管を収縮させる働きがあります。
血管が収縮すると、血管内を通っている血液の圧力が高まるため、血圧が高くなるんですね。
レニン・アンジオテンシン系の高血圧の方は、体質的に「レニン活性が強い」とされます。
血液検査でレニン値を調べることで、レニン活性が強いか調べられます。
自律神経の交感神経による心拍数増加・血管収縮
緊張すると、心臓がバクバクして血圧が上がるのを体験したことがあると思います。
自律神経の交感神経が優位になっていると、脈拍は上がり、血流が良くなり、血圧も上昇します。
交感神経が優位になっている場合は、昔は敵から逃げる・戦うために体中に血流を送って、体の動きを良くするなごりです。
通常は、日中は交感神経が高くなり、夜になると副交感神経が優位になります。
血圧も起床時から日中は高くなり、夜にかけて下がっていきます。
睡眠時は血圧は低くなります。運動・食事などをすると、血圧は一時的に上がります。
また、イライラしたり怒ると、交感神経が高くなり、血圧も上昇します。
血圧上昇と同時に、呼吸の回数も増加します。逆に穏やかな気持でリラックスルすると副交感神経が高まり、血圧も下がります。
これらは、自律神経の働きによるものです。
その他の高血圧になる原因
その他で高血圧になる原因は、次のものがあります。
- 副腎皮質ホルモンによる腎臓の水分の再吸収促進
- バソプレッシンによる利尿作用促進
- 甲状腺ホルモンによる交感神経活性化
これらの高血圧の原因は、病気や体質によるものです。
高血圧の理由が、原因不明の場合は、病院で検査をしていただきたです。
高血圧になる原因は大きく2つ
慢性的な高血圧になる原因は、大きく2つあります。
- 塩分の取り過ぎ
日本人の約7割、65歳以上・高齢になるとなりやすい。 - レニン・アンジオテンシン系による血管収縮
55歳以下の高血圧の方はなりやすい。
加齢によりレニン活性は低くなり、塩分の取り過ぎタイプになっていく。
高血圧だと、塩分のとりすぎは注意しますが、レニン・アンジオテンシン系はあまり意識しないことがあります。
病院で高血圧と診断されると、血圧を下げる薬「降圧剤」を処方されます。
ですが、降圧剤も高血圧のタイプにより、処方薬の効果が変わってくることがあります。
降圧剤は担当医と相談して、効果があるものを使って頂きたいです。
<降圧剤の効果の目安*>
降圧剤の種類 | 効果 |
---|---|
ARB(アンジオテンシンⅡ受容体拮抗薬) | アンジオテンシンⅡの生成を抑制 |
ACE阻害薬(アンジオテンシン変換酵素阻害薬) | アンジオテンシンⅡの生成を抑制 |
カルシウム拮抗薬 | カルシウムイオンが血管の収縮を抑える |
利尿薬 | 体内の塩分を尿として排出させる |
α遮断薬 | 交感神経を高めるのを抑える |
β遮断薬 | 交感神経を高めるのを抑える |
*医師の診断の上、参考にしてください。
まとめ
- なぜ塩分で高血圧になるのかは、体内の塩分濃度を保つ働きで血液量が増えて血管への圧力が上がるため
- 高血圧になる原因は、塩分以外には、レニン・アンジオテンシン系、交感神経などがある
- 降圧剤で血圧を下げる時は、高血圧のタイプに応じた薬を使う