アルツハイマー型認知症で残る・忘れる記憶の種類・違いは?
アルツハイマー型認知症になると、家族や子供の顔も忘れるのではないか?と心配になりませんか?
アルツハイマーは、脳の「海馬(かいば)」という記憶をつかさどる神経細胞が縮小していきます。
海馬には、数分前~数ヶ月に体験したことを記憶する働きがあります。
海馬で覚えた記憶は、覚えている必要があるか判断されます。そして、長期記憶として「大脳皮質」に記録されます。
そのため、海馬の神経細胞が縮小していくと、直近の記憶をするのが難しくなります。
ですが、アルツハイマーの方は、全てのことを忘れてしまうのでしょうか?
そこで、アルツハイマー型認知症で残る記憶、忘れる記憶の違い・種類についてご紹介します。
目次
アルツハイマー型認知症で残る・忘れる記憶の種類は?
アルツハイマー型認知症は、次の記憶が残る・忘れる傾向にあります。
記憶の種類 | 説明 | アルツハイマー型認知症の方 |
---|---|---|
近時記憶 | 5分前~約3ヶ月前に経験・体験した記憶 | 忘れやすい |
展望記憶 | 将来起こる予定に関する記憶 | 忘れやすい |
ワーキングメモリ | 今現在覚えている短期記憶 | 覚えている |
長期記憶 | 数ヶ月前以上の体験・経験で忘れられない記憶 | やや覚えている |
手続き記憶 | 体が覚えている記憶(自転車など) | 覚えている |
近時記憶:苦手
近時記憶は、体験してから数分~数ヶ月までに起きた「海馬」に保存される記憶です。
アルツハイマーで海馬が縮小するため、少し前に起きたことを思い出すのが難しくなります。
近時記憶が失われると、次のような症状が起きやすいです。
- 何度も同じことを話す、聞く
- 数ヶ月前までに体験したこと自体を全体忘れる
- 忘れ物をする
近時記憶を何度も繰り返して記憶させると、長期記憶になります。
勉強で何度も同じことを繰り返し記憶すると、覚えやすくなるのも記憶が長期記憶になるためです。
ですので、認知症の方でも、楽しいこと・嬉しいことを体験すれば長期記憶になることもあります。
展望記憶:苦手
展望記録は、将来起きる予定などの記憶です。
これから起きる予定は、アルツハイマーになると忘れてやすいです。
展望記憶が失われると、次のような症状が起きやすいです。
- 約束したことを忘れる
- 片付けを忘れる
- 日付を忘れる
アルツハイマーの方は、どうしても予定・約束事を忘れやすいので、メモなどで忘れ対策をします。
メモで予定を書いておくことは覚えられます。ですので、予定・約束事は記録しておくとよいです。
ワーキングメモリ:覚えている
今現在、体験していることは、ワーキングメモリという記憶に蓄えられます。
アルツハイマーの方は、ワーキングメモリは働いています。
ですので、ゆっくりと分かりやすいよう話をするとよいです。
長期記憶:やや覚えている
長期記憶は、数ヶ月以上前に体験した記憶です。
記憶は、ワーキングメモリ→近時記憶→長期記憶となって長期間覚えていけるようになります。
長期記憶は、海馬ではなく大脳皮質に保存されるため、アルツハイマーの影響を受けづらいです。
アルツハイマーになっても、長期記憶はある程度は覚えている事が多いです。
特に、長期記憶はインパクトが大きい出来事、大事にしている人・物事は残りやすいです。
ですので、アルツハイマーになっても家族・子供の顔をすぐに忘れることはありません。
ただし、アルツハイマーも進行が進むと、長期記憶の取出しが難しくなってきます。
そのため、アルツハイマーも進行が進むと、長期記憶も忘れていくためご留意ください。
若年性アルツハイマー(64歳以下)は、長期記憶の喪失の進行が早めです。
高齢者(65歳以上)の場合は、ゆっくり進行します。
手続き記憶:覚えている
手続き記憶は、頭でなく体が覚えている記憶です。
考えなくても体が動いてしまう記憶で、ずっと乗っていなかった自転車に乗れたり、料理・楽器など手足を使う記憶です。
手続き記憶は「小脳」に記録されるため、アルツハイマーの影響を受けづらいです。
そのため、アルツハイマーになっても、手続き記憶は失われにくいです。
昔得意だった楽器・運動はできますので、介護する際に活用頂きたいです。
脳の部位と記憶の関係は?
脳の部位と記憶は、次のとおりです。
脳の部位 | 記憶の種類・働き |
---|---|
前頭葉 | 体験・出来事の記憶、計画の記憶 |
側頭葉 | 形を記憶 |
頭頂葉 | 空間把握の記憶、注意 |
後頭葉 | 視覚的な記憶 |
小脳 | 手続き記憶(体で覚えている記憶) |
この他にも、神経核には「扁桃体」があり、危険・恐怖察知などの感情記憶を保持します。
どの脳機能が低下しているか?
認知症が疑われる場合は、「脳SPECT検査」により、どの脳機能が低下しているか分かります。
脳の部位で血流低下している箇所に、認知症の症状が出るのです。
脳SPECT検査は、検査液を注射して検査液が脳血管の血流を計測できる検査です。
特に認知症初期の疑いがある場合は、MRIやMMSEなどの認知症の基本的な検査だけでなく、脳SPECT検査をすることで認知症の早期発見が出来る場合があります。
認知症の早期診断は難しいとされますが、脳血管の血流を見ることで、MRI画像だけでは分からないことも診断可能です。
もし、認知症の初期で早期診断したい場合は、脳SPECT検査をしてみて頂きたいです。
ただ、現在のところ、脳SPECT検査ができる設備がある病院が限られています。検査料金も~10万円と高額なので、今後のSPECT検査の進展に期待したいです。
まとめ
- アルツハイマー型認知症の記憶で残りやすいのは手続き記憶・ワーキングメモリ、忘れやすいのは近時記憶・展望記憶
- 海馬には近時記憶が記録され、残す記憶と判断されると大脳皮質で長期記憶として記録される。
- アルツハイマーになっても、楽器演奏など体が覚えてることは忘れないので、介護に活用したい
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