バセドウ病は完治する?薬・入院・手術の期間・アイソトープ治療は
バセドウ病は、甲状腺から分泌されるホルモンが過剰になる「甲状腺機能亢進症」です。
甲状腺機能亢進症の中でも、約90%がバセドウ病で、日本人で20代~30代の女性に多く発症しています。
バセドウ病になる患者さんの約75%が女性で、女性ホルモンに影響するため妊娠・出産時には注意が必要になる病気です。
女性の場合、妊娠・出産と関係があるためバセドウ病になると妊娠・出産は慎重に進めることになります。
またバセドウ病の症状として、甲状腺の腫れ、眼球の突出、頻脈(脈が速くなる)があります(「メルセブルグの三徴」と言います)。
そこから甲状腺の亢進症として、代謝が良くなってしまうことで動悸・高血圧・疲労・手指の震え・マヒ・汗かき、などの症状が出て、日常に支障をきたすこともあります。
そこで気になるのが、バセドウ病は完治するか、治るのか?という点です。
現在、バセドウ病の治療には、薬による治療、手術・入院による治療、アイソトープ(放射線ヨード)治療の3つがあります。
しかし、バセドウ病の原因の全体像が分かっておらず、どの方法をとっても完治するのは難しいと言われています。
そこで、バセドウ病を完治しなくてもどのような方法で治していくのか、治療法についてご紹介します。
バセドウ病は完治する?薬・手術・アイソトープで治療する
バセドウ病は、英語圏では「グレーブス病」と言い甲状腺亢進症(ホルモンが過剰に分泌され代謝が良くなりすぎる症状)の1つです。
ですが甲状腺亢進症は症状の1つですが、バセドウ病は「病気」として認められています。
バセドウ病では、脳の指令で出される甲状腺刺激ホルモン(TSH)のコントロールが異常になることで症状が発症します。
外部からの刺激を排除する「自己免疫」が甲状腺に出来てしまい、結果的に甲状腺ホルモンが過剰に分泌され、甲状腺の腫れ・眼球の突出・頻脈などになります。
バセドウ病の原因は、自己免疫が関係していますが、完全に原因が判明していないです。
そのため、治療も「完治」させるのは難しく、一時的に病気の症状が収まる「寛解(かんかい」という状態が「治る」とされます。
バセドウ病はしっかり治療を進めていきば、日常生活も普通に生活でき、寿命にも影響を与える病気ではありません。
<バセドウ病の治療法の種類>
- 薬による治療
薬による治療は、誰でも簡単に行える治療で最初に行われる治療の1つです。
薬は「抗甲状腺薬」を服用し、約3~4ヶ月を目処に効果が出るかチェックします。
薬の治療で効果が出てから約6ヶ月くらい、血液検査でTRAb自己抗体が減ってきて、甲状腺の腫れなどがなくなったら薬を止めることができます。
薬の中止が出来たら「完治」というわけでなく「寛解(かんかい)」という症状が収まった状態になり、様子見をしていきます。
バセドウ病の薬は飲んでも効果が出る方と出ない方がいて、5年間で見ると、約30%の方が寛解し、それ以外の方は薬の効果が出ないか、出たりでなかったりを繰り返します。
ただし、再発するリスクがあり、約60%の方が再発してしまう傾向があります。
そのため、治療を早く確実に行いたい方はアイソトープ治療か、手術による治療を行う方も多いです。
- アイソトープ治療(放射線ヨード)
アイソトープ治療は、薬があまり効かない方に行われることが多く、寛解になる割合は60%~70%で治癒率が高いです。
アイソトープは放射線ヨードというカプセルを飲んで、小腸から吸収された放射線ヨードが甲状腺に集まってきて放射線により甲状腺で異常に亢進している細胞を壊して減らします。
放射線というと怖いイメージですが、非常に少ない量の放射線のため副作用はないとされています。
治療した後は1~2ヶ月くらいかけて、ゆっくり治療効果が出てきてます。治療期間は1年間くらい経過を見て、寛解したかチェックします。
安価で、苦痛が少なく薬よりも治療期間が短いため、薬で一定の効果が出ない方はアイソトープが良いとされています。一旦、症状が収まると再発しにくいとも言われています。
ただしアイソトープは放射線を使うため、子供・妊婦・近い将来に妊娠したい女性には向かない治療法です。
そのため、薬で治りづらい中高年の方が行うケースが多いです。
- 甲状腺を切る手術
バセドウ病を手術による治療は、ホルモンを過剰に出さないよう甲状腺を切り取ります。
過剰に働いてしまう甲状腺を切り取れば、ほぼ確実に甲状腺の過剰分泌が抑えられます。
ですが、手術をすると入院が必要で、精神的・経済的に負担がかかるデメリットがあります。
バセドウ病を出来る限り早く確実に治したい、バセドウ病が重篤な方に向いています。
手術は甲状腺を全て摘出する「全摘手術」と、一部だけ摘出する「亜摘出」があります。
現在の病院では、バセドウ病の患者さんが再発をしないよう全摘するように進める病院が多いようです。
全摘すると、甲状腺からホルモンを出すことができなくなるため、ホルモンを補充する薬を一生飲む必要があります。1日1回甲状腺ホルモン剤を飲む必要がありますが、値段は安く副作用もなく、バセドウ病の症状がなくなるため、トータルで考えると全摘をすすめられることが多くなっています。
甲状腺の一部を取り除く手術では、効果は高いものの、甲状腺を残すため、再発の可能性がなくならないのです。そのため、甲状腺の状態をチェックするため数ヶ月に一度、甲状腺のチェックで通院したり、再発して再手術する必要がないです。
バセドウ病の手術をご検討の方は、担当医とよく話してどちらがよいか決めて頂きたいです。
バセドウ病の手術の期間・流れは?
バセドウ病の手術は、それほど難しい手術ではありません。
甲状腺の手術は約1~2時間程度で終わりますが、入院から退院までの期間は1週間~2週間くらいです。
手術の数日前に入院して、検査などを実施します。
手術はすぐ終わります。抜糸は術後2日後くらいで、甲状腺機能を安定化させるため、入院は約1週間くらいします。
手術翌日から歩くことは可能です。
退院までの期間は手術後7日~10日間くらいかかります。
仕事に戻るには、体力などを戻すためには、さらに約1週間~2週間程度です。
トータルでは、3週間~4週間の休みが必要になります。
バセドウ病の手術のリスクは?
バセドウ病の手術は、難しいことはないです。
ですが喉の気管の近いところを手術するため声がかすれたりすることがあります。
・嗄声(させい)
甲状腺の裏側に気管があるため、声を出すとかすれた声が出ることがあります。
これは気管の近くを手術したことによる一過性のマヒで一時的なものです。長いと2~3ヶ月かかることがあります。
・喉頭浮腫(こうとう・ふしゅ)
手術の出血が傷の内部にたまると、喉にむくみができることがあります。
喉にむくみが出来ると、気道を圧迫して息苦しさ、まれに呼吸困難になることがあります。
・テタニー症状
テタニー症状とは、ホルモン分泌低下による顔面がこわばったり、手足がしびれたりする症状です。
手術中に副甲状腺に傷つけてしまうとテタニー症状になりますが、技術が進んでいる現在はほぼないといえます。
まとめ
- バセドウ病は完治は難しく「寛解(かんかい)」という症状が収まる状態を目指す
- 治療の方法は、薬・アイソトープ・手術があるが、どの治療法がよいか担当医と相談する
- バセドウ病を早く確実に治癒するならアイソトープが良いが、妊婦さんなど治療出来ない人もいるので注意